So-net無料ブログ作成

33 死後の後悔 Remords posthume


       33 死後の後悔

黒大理石で建てられた墓の底に、
我が愁いの美女、君が眠るであろう時、
そして閨房として、館として、雨の滴る
地下墓所、虚ろな墓穴でしか君が持てないであろう時、

墓石が、君の臆病な胸と、
すてきな無頓着が柔らかくする両脇腹を圧迫していて、
君の心臓の脈打ち欲することを、
君の両足の奔放に駆け走ることを妨げるであろう時、

その墓は、私の無限の夢の腹心だが、
(なぜなら墓はいつも詩人を理解するであろうから)、
眠りが追放されたそれら多大な夜々のあいだ、

君に言うだろう、「何になる、不完全な遊女、死者たちが
嘆いているものを、あなたが知らなかったとしても?」
― そして蛆虫は君の肌をかじるだろう、後悔のように。


32 <ある夜、私がひどい. . . > <Une nuit que j'étais. . .>

    32 <ある夜、私がひどい. . . >

ある夜、私がひどいユダヤ女のそばに、
死体に寄り添う、横になった死体然でいたとき、
私はこの身を売った肉体のそばで、急に思い始めた、
私の欲望が自ら禁じている、その悲しい美女のことを。

私が思い浮かべていたのは、生まれながらの彼女の威厳、
力強さと優美さで武装された彼女の眼差し、
彼女の髪。それは芳香の兜であり、
その記憶が私を愛へと復活させる。

というのは、私は熱烈に君の高貴な体にキスしただろうし、
君のひんやりした足から黒い編み毛まで
深い愛撫の宝を展開しただろうから、

もし、ある晩、努力しないで得られた一滴の涙で、
君がただ、オー残酷な女たちの女王!、
冷たい瞳の輝きを曇らせることができたなら。


31a 忘却の川 Le Léthé


       31a 忘却の川

来なさい、私の心臓の上に。残酷で聞く耳のない人、
愛される虎、物憂げな雰囲気の怪物。
私は震える指々を長く沈めていたい、
君の重いたてがみの密なところに。

君の香りに満ちたペチコートのなかに
私の痛い頭をうずめ、
嗅いでいたい、枯れた花のような、
過ぎ去った私の恋の懐かしい臭いを。

私は眠りたい! 生きるよりは眠りたい!
死と同じほど甘美な眠気のなかで、
私は悔いなくキスを並べよう、
銅のように艶のある君の美しい体に。

私の静められた嗚咽を飲み込むのに
君の寝床の深淵は有害だ。
強い忘却は君の口に居ついている、
それで忘却の川は君のキスのなかを流れている。

私の運命に、今や私の快楽だが、
私は従おう、救霊予定者のように。
従順な殉教者、無実の受刑者、
その熱意が刑罰をあおっている者だ。

私の恨みを溺れさせるために、私は吸おう、
憂さ忘れの薬を、よい毒人参の汁を、
とがったこの胸の魅惑的な二つの先端で。
そこに一度も心を閉じ込めたことはないが。


31 吸血鬼 Le Vampire


        31 吸血鬼

君、ナイフの一撃のように、
悲しげな私の心に入った人。
君、悪魔の群れのように強く、
浮かれ、着飾って、来た人、

侮辱された私の精神を
君のベッドと君の領地にする人。
― 破廉恥、それに私は結ばれている。
徒刑囚と鎖のように、

頑固なばくち打ちと賭博のように、
酒飲みと酒瓶のように、
死骸と蛆虫のように。
― 呪われてあれ、呪われてあれ、君は!

私は素早い剣に
私の自由を勝ち取ってくれと頼んだ。
そして私は危ない毒薬に
私の臆病さを救ってくれと命じた。

アー! 毒薬と剣は
私を軽蔑し、私に言った、
「呪われた君の隷属状態から君を
持ち上げる値はない、

愚か者! ― 彼女の支配から
我々の努力が君を解放しても、
君の接吻は復活させるだろう、
君の吸血鬼の死体を!」


30 深淵ヨリ我叫ビヌ De profundis clamavi


     30 深淵ヨリ我叫ビヌ

私は君の同情を哀願する、君、私の愛する唯一の人、
私の心が落ちた暗い深淵の底から。
これは鉛色の地平にある陰鬱な世界、
そこに漂うのは恐怖と冒瀆の言葉。

熱のない太陽は六箇月、見おろし
他の六箇月は、夜が地上を覆う。
それは、極地よりも裸同然の国。
― 獣も、小川も、草木も、森もない!

さて、氷の太陽の冷酷な厳しさ、
そしてはるか昔のカオスに似たこの無限の夜、
この世にそれらをしのぐ恐怖はない。

私はこの上なく卑しい動物たちをうらやむ。
かれらは馬鹿のような眠りに没頭できる。
非常にゆっくりと時の桛は繰られる!


29 腐った死骸 Une charogne


        29 腐った死骸

思い出しなさい、いとしい人、心地よい夏の
  あの晴れた朝、我々が見た物を。
小道の曲がり角に、忌まわしい腐った死骸が
  小石のまかれたベッドの上で、

両足を空中にあげ、好色女のようだが、
  焼けて毒をにじませ、
無頓着で冷笑的な仕方で
  悪臭に満ちた腹を開いていた。

太陽はその腐った物の上に光り輝いていた。
  ほとんどそれを程よく焼くために、
偉大な「自然」が一緒につなげていた物の全てを
  そこに百倍にして返すために。

そして天は見事な死骸が花のように
  咲いているのを眺めていた。
悪臭はあまりにも強く、草の上に
  あなたは気絶すると思った。

蠅たちは腐敗したその腹の上をぶんぶん飛んでいて、
  そこから蛆虫らの黒い大隊が外へ出てきていた。
それらは生きているその残骸をつたって
  濃い液体のように流れていた。

すべてそれらは、波のように下がり上がりして、
  ぱちぱちと飛び出していた。
言うなれば、その肉体は、あいまいな息吹でふくらみ、
  自ら繁殖させながら生きていたのだろう。

そしてその世界は奇妙な音楽を発していた、
  流水や風のように。
または、穀粒のように。リズミカルな動きのその選別人が
  蓑のなかで、それをゆさぶり回している。

形は消え、もはや夢で、達成するには遅い
  下絵でしかなかった。
画布の上に忘れられ、それを画家が
  思い出によってのみ仕上げるのだが。

岩に隠れて、不安げな雌犬が
  怒った目で私たちを見ていた。
その犬が骸骨にあって口から落した
  肉片を取り戻す時をうかがいながら。

― しかしながら、あなたはその汚物、
  恐ろしく悪臭を放つ物に似るだろう。
我が眼の星、我が自然の太陽、
  我が天使にして我が情熱のあなたも!

そうです! そのようにあなたもなる、オー優美の女王。
  臨終の秘跡の後、
あなたが草と開花の下へ行き、骸骨らの間で
  黴が生えるときに。

その時、オー我が美人! あなたにキスを浴びせる
  害虫に言いなさい、
私の分解された恋愛の、形と神聖な本質を
  私は守っていると!


28 踊る蛇 Le Serpent qui danse


         28 踊る蛇

なんて私は好きなのだろう、物憂げさん、
   これほど美しい君の体を見るのが、
ゆらめく布地のように、
   その肌がきらめくのが!

きつい香りのする
   奥深い君の髪、
青と褐色の波のある
   芳香と気まぐれの海のうえに、

ちょうど、朝の風に
   目覚める船のように、
夢想にふける私の魂は、
   はるかな空に向けて出航準備をする。
   
君の眼は、甘美も苦みも
   何も表さないし、
冷たい二つの宝石だ、
   それは金と鉄を混ぜている。

君が拍子をとって歩くのを見ると、
   くつろぎの美女、
まるで棒の先で踊る
   蛇のようだ。

怠惰の重荷で
   子供のような君の頭は
おさない象のように
   柔らかく揺れ、

君の体は傾き長々と横たわる。
   ひどく横揺れし
帆桁を水中に沈める
   細い船のようにして。

氷河がうなり溶けて
   増大された流れのように、
君の口の水が
   歯々の縁まで高まるとき、

私が飲んでいると思うのは、苦くて
   勝利者のボヘミヤのワイン、
私の心に星々をちりばめる
   液体の空!


27 <波打つ真珠光沢の. . . > <Avec ses vêtements. . . >


     27 <波打つ真珠光沢の. . . >

波打つ真珠光沢の衣装をつけて、
彼女は歩く時でも、踊っているようだ、
長い蛇たちのように。それらは聖なる芸人たちが
棒の先に拍子をとって揺り動かしている。

砂漠の陰気な砂や青空のように。
二つとも人間の苦悩に無関心だ。
海のうねりによる長い網々のように
彼女は平然と展開している。

磨かれた彼女の眼は、魅力の鉱物でつくられ、
この奇妙で象徴的な自然のなかで、
その犯されない天使が古代のスフィンクスと交じり、

すべてが金、はがね、光、ダイヤモンドでしかなく、
そこで無用の星のように、永遠に輝くのは、
不妊の女の冷たい威厳。


26 サレド女ハ飽キタラズ Sed non satiata


      26 サレド女ハ飽キタラズ

奇妙な女神。夜のように浅黒く、
麝香とハバナたばこの混じった香りがする。
ある呪術師、草原のファウスト博士、の作品、
黒檀の脇腹をした女魔法使い、真夜中の闇からの子、

私が好むのは、コンスタンスのワイン、阿片、ニュイの
ワインよりも、君の口の妙薬だ、そこで恋が気取って歩く。
君に向って私の欲望たちが団体で動き出す時、
君の眼は貯水池だ、そこは私の倦怠を飲み込む。

これらの大きな黒い両目、君の魂の風穴、から
オー哀れみのない悪魔! 私にあまり炎を注ぐな。
私は君を9回抱くための冥界の川ではない。

悲しや! しかも私はできない、みだらな復讐の女神、
君の熱意を打ち砕き、君を追いつめるために、
君の寝台の地獄において冥界の女神になることが!


25 <君は全宇宙を. . . > <Tu mettrais. . . >


     25 <君は全宇宙を. . . >

君は全宇宙を君の閨房に移しそうだ、
みだらな女! 倦怠が君の魂を残酷にしている。
この奇妙な戯れに対して君の歯を鍛えるには、
毎日まぐさ棚に心臓が一つ必要だ。
君の眼は、店のように、
公の祭りの燃えさかる燭台のように輝き、
これ見よがしに借りものの力を使っている。
眼の美の法則を決して知らないで。

盲でつんぼの機械だ、残忍性では実り多い!
有益な器具、世界の血を飲む人、
どうして君は恥ずかしくないのか、どんな鏡の前でも
君の色香があせていくのを、どうして見なかったのか?
君が自分を物知りだと思っている、この悪の権威は
今まで自分を恐怖で尻込みさせたことがなかったのか、
隠された構想において偉大な自然が、
君を使う時に、オー女、オー罪の女王、
― 君、卑しい獣を、 ―天才を捏ね上げるために?

オー泥まみれの権威! 崇高な恥辱!


24 <私は君をあがめる. . . ><Je t'adore. . . >


     24 <私は君をあがめる. . . >

私は君を崇める、夜の大空と同じくらいに。
オー悲しみの器、オー高貴で寡黙な女、
私は君、美しい女を愛する、私を避けるだけに一層。
そして君、私の夜の飾りが、私の両腕を
広大な青空から隔てる距離を、もっと皮肉を込めて
積み重ねているらしいだけに一層。

私は前進して攻撃し、よじ登って襲いかかる、
死骸をめざす蛆虫の一群のように。
そして私が執着するのは、容赦なく残忍なオー獣!
君がもっと美しい、その冷たさまでも!


23 髪 La Chevelure


          23 髪

オーふさふさした髪、うなじの上まで波打っている!
オー巻き毛! オー香り、物憂さで満ちている!
恍惚! 今宵うす暗い寝室を
この髪のなかに眠るいくつもの思い出で満たすために、
私はこの髪をハンカチのように空中で振りたい!

物憂げなアジアと燃えるアフリカ、
遠い、いない、ほとんど亡くなった世界の全てが
君の深い所、アロマの森で生きている!
別の人々の心が音楽の上を漕ぎ進むように、
私のそれは、オーおまえ!、君の香りの上を泳いでいる。

私は向こうへ行こう。そこは木と人が、精気にあふれ、
酷暑の気候のもとに、久しくうっとりしている。
強い編毛が、私を連れ出す波であれ!
黒檀の海の君は、輝くばかりの夢を含んでいる。
帆、漕ぎ手、旗そしてマストについての。

よく響く港、そこで私の魂は、香り、音、色を
なみなみと飲むことができる。
そこで船々は、ゴールドとモアレのなかをすべり、
それらの巨大な腕々を開く。永遠の熱気が震える
清らかな空の栄光を抱きしめるために。

私は陶酔好きな私の頭を、この黒い海原に沈める。
そこにはもうひとつの海原が隠されている。
すると横揺れが愛撫する私の鋭敏な心は、あなたを
再び見つけることができるだろう。オー実り多い怠惰、
かぐわしい余暇の限りない揺らめき!

青い髪、暗闇を張りつめたテント、
あなたは私に広大でまるい空の青を返してくれる。
よじったあなたの髪の房々の、にこ毛の生えた辺りで
私は熱烈に酔いしれる、ココヤシの油と
麝香と瀝青のまじった芳香に。

久しく! いつも! 私の手は君の重い長髪のなかに
ルビー、真珠、そしてサファイアをまき散らそう、
私の願望に君が決して耳を貸さないことのないようにと!
君は、私が夢見るオアシスではないのか、そして
私が思い出のワインをじっくり飲む瓢ではないのか?


22 異国の香り Parfum exotique


       22 異国の香り

両目を閉じ、秋の暖かな夕暮れに、
君の温かな乳房のにおいをかぐと、
幸せな浜辺が広がっているのが見える。
そこは単調な太陽の火がまぶしく照らしている。

怠惰の島、その自然は変わった木々や
おいしい果実をもたらしている。
男たち、その身体は細くたくましい、
そして女たち、その目は率直で驚かせる。

感じのいい気候へと君のにおいに導かれ、
帆やマストでいっぱいの港が見える。
それらは今も海の波によって疲れ切っていて、

タマリンドの香りが、
空中をめぐり、私の鼻孔をふくらませ、
私の魂のなかで、水夫たちの歌にまじっている間に。


21a 宝石 Les Bijoux


       21a 宝石

いとしの女は裸だった、それも、私の心を知っていたので、
彼女はよく響く宝石類しか身につけていなかった。
その豪華な装い一式は、勝利者の様子を彼女に与えていた。
その様子はサラセンの女奴隷の幸運な日々を見せている。

踊りながら、その装いが活発でからかいの音を立てるとき、
金属と石の輝くこの世界は
陶酔で私を魅了する。それで私は
音が光に混ざる状況を熱烈に愛するのだ。

ところで彼女は横たわり、愛されていた。
そして寝椅子の上から満足げに微笑んでいた。
海のように深く優しい私の愛に、
彼女の方への、断崖に向かうように込みあげる愛に。

私に注ぐ両の眼、飼いならされた虎のよう、
ぼんやりと夢見がちに、彼女は色々なポーズを試していた。
しかも淫欲に結ばれた無邪気さは
さまざまな変身に新しい魅力を与えていた。

そして彼女の腕と脚、太ももと腰は、
油のように艶があり、白鳥のようにしなやかで、
私の透視する平静な眼の前をよぎった。
しかも彼女の腹と乳房は、私のブドウの房であり、

近寄ってきたものだ。悪の天使よりも甘えん坊で、
私の魂が置かれていた休息を邪魔するために、
そして私の魂を、静かに孤独に座っていた
水晶の岩から落すために。

髭の生えていない少年の上半身にアンティオペーの腰を
つないだのを、新しいデッサンによって見ると信じていた。
それほどその胴は骨盤を強調させていた。
鹿毛色と褐色の顔色への化粧は見事だった!

― そしてランプはあきらめて消え、
暖炉だけが寝室を照らし、
燃え立つ溜息を発するたびごとに、
その琥珀色の肌を血でいっぱいにしていた!


21 美への賛歌


       21 美への賛歌

君は深い天空から来るのか、深淵から出て来るのか、
オー「美」よ? 君の眼差しは、地獄のようで神々しく、
善行と犯罪を区別しないで注ぐ。
そのために君を葡萄酒と比べることができる。

君はその目に、夕日と暁を含んでいる。
君は香りを放つ、雷雨の夕方のように。
君のキスはほれ薬、君の口は古代の壺
それらは英雄を臆病にするし、子供を勇敢にする。

君は黒く深い穴から出て来るのか、天体から降りて来るのか?
魅せられた「運命」は、犬のように君のペチコートを追う。
君は気まぐれに喜びと災いの種をまき、
すべてを支配し何も責任を取らない。

「美」よ、君は死者たちの上を歩く、ばかにしながら。
君の宝石らのひとつ「恐怖」は、なかなか魅力的だ、
そして「殺人」は、君の好きな安宝石らのなかにあるが、
傲慢な君の腹の上で愛をこめて踊る。

目がくらんだカゲロウは、ロウソクの君に飛んで行き、
ぱちぱち音をたて、燃えて言う、「この炎を祝福しよう!」
そのあえぐ恋人は、美女の上に屈み
自分の墓を愛撫している瀕死の人のようだ。

君が天からか地獄からか来ようと、それが何だ、
オー「美」よ! 法外な、恐ろしい、無邪気な怪物よ!
もし君の目、君のほほえみ、君の足が、私の愛し
かつて知らなかった「無限」の扉を私に開くのならば?

サタンか神からの出か、それが何だ?「天使」か「人魚」、
それが何だ、もし君が、― ビロードの眼の妖精、
リズム、香り、ほのかな光、オーわが唯一の女王!―
全世界の醜さを減らし、瞬間ごとの重みを減らすならば?


20 仮面

 
        20 仮面

       ルネッサンス趣味の寓意的彫像
       彫像作家エルネスト クリフトフに

じっくりと見よう、フィレンツェ風に優美なこの宝物を。
筋肉質のこの肉体のうねりのなかに
神々しい姉妹、「優雅」と「力」が豊富にある。
この女性は、真に奇跡の作品、
神々しく頑丈で、惚れ惚れするほどほっそりしていて、
豪華なベッドの上に君臨するために作られている。
高位聖職者あるいは王侯の気晴らしを魅了するためにも。

―さらに、見よ、上等で官能的な、この微笑みを、
そこでは「うぬぼれ」が恍惚を引きずっている。
陰険で、物憂げで、嘲笑する、この長い眼差しを、
ヴェールですっかり囲まれた、この可憐な顔を。
それぞれの特徴が、勝利者の雰囲気で我々に語っている。
≪「快楽」が私を呼び、「愛」が私に王冠をかぶせるの!≫
多くの威厳を授けられたこの存在に
見よ、なんと可愛らしさが刺激的な魅力を与えていることか!
近づこう、そして彼女の美しさの周りをまわろう。

オー芸術の冒瀆!オー致命的な不意打ち!
神々しい肉体の女は、幸福を約束しているが、
上方が双頭の怪物で終わっているぞ!

―いや違う! 仮面で、誘惑の飾りでしかないのだ、
こちらの顔は。甘美なしかめ面で輝いている。
そして、注視せよ、ここにある、恐ろしくひきつった
本当の頭が、本物の顔が。
うそをつく顔のかげで、のけぞっている。
哀れな大きな美女! 君の涙の
すばらしい大河は、心配する私の心に達している。
君の嘘は私を酔わせる、それゆえ私の魂は、たっぷりと
飲むのだ、「苦悩」が君の両目から湧き出る流れを!

―しかしなぜ彼女は泣いているのか? 彼女は、完璧な
美女で、征服された人類を彼女の足下に置きもしよう、
どの謎の病気が、競技者の彼女の脇腹をかじっているのか?

―彼女は泣く、愚か者、なぜなら彼女が生きてきたからだ!
そして彼女が生きているからだ! しかし彼女が特に
嘆くのは、彼女を両膝まで震わせるのは、
明日も、アー! また生きなければならないからだ!
明日も、明後日も、いつまでも! ―我々と同じく!




19 巨大女


        19 巨大女

むかし「自然」がその強いむら気をもち
毎日、怪物のような子供たちを孕んでいた頃には、
若い巨大女のそばに、私は好んで暮らしただろう、
女王の足元の享楽的な猫のように。

私は好んだだろう、彼女の体が魂とともに花開き、
恐るべき戯れなかで自由に成長することを眺めるのを。
彼女の心が暗い炎を抱いているかどうかを
その両目に浮かぶ潤んだ霧から判断するのを。

その見事な体の線を心ゆくまで、くまなく歩き回るのを。
その巨大な膝の斜面を這い進むのを、
また時々夏に、不健康な日ざしが、

くたびれた彼女を、野原を通して横にさせるとき、
その乳房の陰で、のんびり眠るのを。
まるで山のふもとにある平穏な小集落のように。


18 理想


         18 理想

決して挿絵にあるそれらの美女たちではないのだ、
傷んだ商品、ろくでなしの世紀に生まれていて、
編上靴をはいたそれらの足、カスタネットをもった指
でもないのだ、私の心のような心を満足させ得るものは。

私は施療院にいる美女たちのさえずっている群れを
萎黄病の詩人、ガヴァルニに任せる。
なぜなら私は、それらの青ざめたバラたちのなかに
私の理想の赤に似た花を見出し得ないからだ。

深淵のように底深いこの心に必要なのは、
あなただ、マクベス夫人、罪に強力な魂、
烈風の気候に花咲いたアイスキュロスの夢。

あるいは君だ、偉大な「夜」、ミケランジェロの娘、
奇妙なポーズで穏やかに
巨人族の口にあう胸をよじっている!


17 美


          17 美

私は美しい、オー死すべき人間たち! 石の夢のように、
そして私の胸は、各人がかわるがわる傷ついたところで、
永遠で無言の愛を物質のように
詩人に吹き込むために作られている。

私は青空に君臨している。不可解なスフィンクスのように。
私は雪の心を白鳥の白と結びつける。
私は線を動かす運動を嫌悪する。
そして決して私は泣かないし、決して私は笑わない。

詩人たちは、私の偉大な態度を前にして、それは
誇らしいモニュメントから借りたかに見えるが、
厳しい研究に彼らの日々を使い尽くすだろう。

なぜなら私は、それらの素直な恋人たちを魅了するために、
万物をより美しくする澄んだ鏡をもっているから。
私の目、永遠の光をもつ私の大きな目!


16 傲慢の罰


        16 傲慢の罰

あの驚くべき時代に、それは「神学」が
最も活気と精力にあふれ、花開いたときだが、
人の話によれば、飛びぬけて偉大な博士がある日
― 無関心な人々の心をこじ開け、
暗い奥底のなかの彼らを感動させた後で、
純粋な「精霊たち」だけがたぶん来ていた
特異で彼自身知らない道を
天の栄光に向かって踏み越えた後で、―
あまりにも高く登った男のように、パニックに陥り、
悪魔の慢心に我を忘れ、叫んだということだ。
≪イエス、ちっちゃいイエス! 君を大いに高く推したぞ!
だが、もし私が君の鎧のすき間に刃向かう気だったなら、
君の恥は君の栄光と同等に位置するだろう、
そして君はもう笑うべき胎児にしか過ぎないだろう!≫

直ちに彼の理性は無くなった。
その太陽の輝きはヴェールをかけたように曇った。
すべてのカオスが循環した。その知性、
昔となった生ける伽藍のなかで。それは秩序と豪奢に
満ち、その天井の下で彼には多大な栄誉となっていた。
沈黙と夜が彼のなかに住みついた。
まるで鍵をなくした地下墓所のなかのように。
その時から彼は道にいる獣のようだった。
それも、目が見えず、野原を横切り、
夏冬の区別もつかない彼が出かけた時は、
汚く、無用で、廃物同然の醜さで、
子供たちの楽しみと笑いぐさになっていた。


15 冥府のドン ファン


     15 冥府のドン ファン

ドン ファンが地下の川の方へ降り、
渡し守カロンに硬貨を与えた時、
ある陰気な乞食は、アンティステネスのような荒々しい
目をして、復讐の強い手で、それぞれの櫂をつかんだ。

垂れた乳房を見せ、服の前をはだけて、
女たちは黒い天空の下で身をくねらせていた、
それも、ささげられた生贄の大群のようにして、
彼の後ろで、牛の長いうなり声を彼女らは引きずっていた。

スガナレルは笑いながら給金を請求していた、
ドン ルイスは震える指で
岸辺にさまよう全ての死者らに、
自分の白髪頭を冷やかした大胆な息子をさし示したときに。

喪服の下で震えながら、貞節でやせたエルヴィールは、
背信の夫で過去に彼女の恋人だった男の近くで、
最高のほほ笑みを彼に求めているようだった、
それは彼の初めての誓いの優しさが輝いていたが。

甲冑姿で直立した、背の高い石の男は、
舵をもち、黒い流れを切っていた。
だが静かな英雄は、長剣にもたれ、
その航跡を眺め、何ものにも目をやろうとしないでいた。


14 人間と海


        14 人間と海

自由な人間、いつまでも君は海をいとおしむだろう!
海は君の鏡だ。その波の限りない逆巻きのなかに
君は自分の魂を凝視する。
そして君の精神は、苦さで劣らずの深淵だ。

君は好んで自分の心象の胸中に飛びこむ。
君は両目と両腕でそれを抱き、君の心は
その自分のざわめきから時には気をそらす、
不屈で野生のその嘆き声を聞いて。

君ら、君と海ともどもは、暗く控えめだ。
人間、誰も君の深淵の深さを計測しなかった、
オー海、誰も君の内奥の富を知らないでいた、
君らが自分の秘密を守るのに執着しているからだ!

しかしながら数え切れない世紀の間、
君らは哀れみも悔いもなく、君らと戦っている、
それほど君らは、殺戮と死を愛している、
オー永遠の闘士たち、オー容赦ない兄弟たち!


13 旅するボヘミアン


     13 旅するボヘミアン

預言者の種族は、燃える瞳で
昨日街道に身を移した、幼児を背負い、
あるいは、そのすばらしい食欲に
いつも用意のできた宝、垂れた乳房をゆだねながら。

その男たちは輝く武器の下を歩いて行く、
彼らの家族が身を寄せる荷車に沿って。
消えた空想の陰気な後悔によって
重くされた目を空に向かって巡らせながら。

砂の多い砦の奥から、コオロギは、
彼らが通過するのを見ながら、その歌声を倍加している。
彼らを愛する大地の女神キュベレは、彼女の緑を茂らせ、

岩山から清水を流し、砂漠を花で飾らせる、
その旅人たちの前で。彼らに開かれているのは
未来の暗闇の、いつもの世界。


12 前世


         12 前世

私は壮大な柱廊の下に長い間住んだ、
海のいくつもの太陽は、そこを幾千もの火で染めていた、
その大きな列柱は、垂直にして壮大で、
夕方、そこを玄武岩の洞窟のようにしていた。

波のうねりが、天の像を映して巻き込みながら、
荘厳で神秘の仕方で混ぜていたのは、
その豊かな音楽の、全能の響きと
私の目に映った夕日の色。

そこなのだ、私が穏やかな逸楽に生きたのは、
碧空、波々、壮麗さの真ん中で、
香りがしみこんだ裸の奴隷たちに囲まれて。

彼らは棕櫚の葉で私の額を涼しくしていた、
そして唯一の心配りは、私を憔悴させていた
苦悩の秘密を掘り下げることだった。


11 不運


         11 不運

これほどの重荷を持ち上げるには、
シシュフォス、きみの元気が必要だろう!
仕事に精を出す気はあるにもかかわらず、
「芸術」は長く、「時」は短い。

名高い墓から遠く離れ、
人里離れた墓地に向かって、
私の心臓は、かすかな太鼓のように、
しだいに葬送行進曲を打ち鳴らしている。

―多くの宝石は埋もれて眠っている、
暗闇と忘却のなかで、
つるはしとボーリング機からはるかに離れて。

多くの花は心ならずも
秘密のような甘いその香りを放っている、
深い孤独のなかで。


10 敵


          10 敵

私の青春は、暗闇の雷雨でしかなかった、
そこかしこ、輝く日光によって貫かれていたが。
雷と雨が大損害を生じさせた、
私の庭に残っているのは、ごく少数の赤い実だ。

さて私は思想の秋にかかわってしまっている、
それなのに、洪水が墓のように大きな穴々を掘り
その水につかった土地を、シャベルと熊手を使って
新たにまとめなければならない。

そして誰が知ろう、私の夢見る新しい花々が
砂浜のように洗われたこの土壌のなかに
それらの活力となる神秘の糧を見出すかどうかを。

―オー苦痛!オー苦痛! 「時」は生命を食べている、
しかもその難解な「敵」は、われらの心臓をかじり、
われらの失う血で、増大し強固になる!


9 劣った修道士

     
       9 劣った修道士

昔の修道院の回廊というものは、大きな壁に
神聖な真理を絵にして並べていた。
その効果は、敬虔な心を底から温め、
厳格な生活方法の冷たさを和らげていた。

キリストのまいた種が花開いていたその時代、
今はあまり引き合いにならない卓越した修道士が
一人ならず、葬式の場をアトリエとみなし、
率直に死をたたえていた。

―私の魂は墓だ、劣った共住修道士の私が
ずっと前から歩き回り、住んでいるところ。
忌まわしいこの回廊の壁々を飾るものは何もない。

オー怠惰な修道士!私はいつ
私の悲しい逆境の今も続く光景を
私の手で作品にし、私の目で愛することができるのか?


8 金で動くミューズ

      
       8 金で動くミューズ

オーわが心のミューズ、宮殿の愛好者、
きみは、一月がその北風の神々を放つとき、
雪の晩の黒い倦怠のあいだに、きみの紫色の両足を
暖めるための燃えさしを持っているだろうか?

きみはじゃあ、よろい戸にさし込む夜の光で
大理石模様のきみの肩をよみがえらせるのか?
きみの財布はきみの宮殿と同じく空っぽだから、
蒼空のドームから、金を採取するのか?

きみは、毎晩のパンを得るために、
聖歌隊の子供のように、香炉を振ったり、
ほとんど信じない讃歌を歌ったり、

あるいは、空腹の大道芸人のように、きみの色気と人の
知らない涙にぬれたきみの笑いをさらさなければならない、
庶民の腹をよじらすために。


7 病気のミューズ

     
         7 病気のミューズ

私の哀れなミューズ、アー!今朝はいったいどうした?
きみの落ちくぼんだ目には夜の幻たちが住みついている、
しかも私が見るのは、かわるがわるきみの顔色に映される
狂気と恐怖、冷たく無口だ。

緑がかった女夢魔やピンクの小悪魔が
彼女らの壺から、きみに恐れと恋愛を注いだのか?
悪夢が、横暴で反抗的な拳によって、
きみを伝説的なミントゥルナエの沼底で溺れさせたのか?

私は願っている、健康のにおいを発する
きみの胸が、いつも強い思考力の訪れであることを、
そしてキリスト教徒のきみの血が律動して流れることを

古代の音節にある数々の響きのように。
そこでは歌の父太陽神と、収穫を司る偉大な牧神が
かわるがわる君臨している。


6 灯台たち

 
       6  灯台たち

ルーベンス、忘却の河、怠惰の楽園、
輝く肉の枕、そこでは愛することが不可能、
しかし生命は流れ込み絶えず揺れ動いている、
空の大気や海のなかの海のように。

レオナルド ダ ヴィンチ、深く暗い鏡、
そこでは魅惑的な天使たちが、なぞに満ちた
やさしい微笑を浮かべ、その国を囲む
氷河や松の陰に姿を現している。

レンブラント、悲惨な施療院、ささやきが満ちあふれ、
キリスト像のついた大きな十字架がただ一本飾られている、
そこでは涙ながらの祈りが汚物から立ちのぼり、
ひと筋の冬の光が不意に横切っている。

ミケランジェロ、漠然とした場所、そこで見えるのは
キリストたちに交じるヘラクレスたち、
そして、すっくと立ち上がる強い亡霊たち、
かれらの屍衣を夕暮れに、指を伸ばし引きちぎっている。

ボクサーの怒り、半獣神の破廉恥、
きみは、従卒の美を拾い集めることができた、
傲慢でふくれた偉大なる心、虚弱で黄ばんだ男、
ピュジェ、徒刑囚らの憂鬱な帝王。

ヴァトー、あの謝肉祭、そこでは高名なる人々が、
蝶のように、光り輝きながらさまよっていて、
新しく軽い舞台装置が、渦巻く舞踏会に狂気を注ぐ
シャンデリアに照らされている。

ゴヤ、悪夢、未知の事柄でいっぱいだ、
サバトのさなかで煮られている胎児で、
鏡に向かう老婆たちで、そして全裸の少女たちで、
彼女たちは悪魔らを誘惑するために、靴下を直している。

ドラクロワ、血の湖、悪い天使らが出没している、
常緑の樅の林が影を落としている、
そこでは、陰鬱な空の下で、奇妙なファンファーレが
過ぎて行く、ウェーバーの押し殺された溜息のように。

これらの呪い、これらの冒瀆、これらの嘆き、
これらの忘我、これらの叫び、これらの涙、これらの賛歌は、
無数の迷路を通って繰り返し響くひとつの木霊だ。
それは死すべき人間にとってひとつの神の阿片だ!

それはひとつの叫び、無数の歩哨により繰り返される、
ひとつの命令、無数の伝声管により返信される。
それはひとつの灯台、無数の城砦にともされる、
ひとつの呼び声、大きな森で迷っている狩人たちの!

なぜなら、主よ、それはまさにわれらの尊厳について
われらが示しうる最良の証言だからだ、
時代から時代へ巡り、あなたの永遠の岸辺で
消滅することになる、その熱烈なむせび泣きこそは!