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50 曇り空 Ciel brouillé


        50 曇り空

まるで君の眼差しは靄で覆われているようだ。
不思議な君の目は(それは青色、灰色、緑色?)
代わるがわるに優しく、夢見がちで、残酷で、
空の無感覚と青白さを映している。

君は白く、生暖かく、ぼやけたあれらの日々を思い出させる。
それらは魔法にかかった心を泣き崩れさせている、
そのとき、心をねじる何とも知れない悪であおられて、
あまりに覚めた神経は、眠る精神を揶揄している。

君は時々それぞれの美しい地平線に似ている。
それらに霧の四季のそれぞれの太陽が火をつける. . .
なんて君は輝いているのか、ぬれた風景
それを曇り空から射す光が燃え上がらせている!

オー危険な女、オーうっとりする風土!
私は君の雪も氷霧も熱愛するだろうか、
そして私は冷酷な冬から引き出せるだろうか、
氷よりも鉄よりも鋭い快楽を?


49 毒 Le Poison


          49 毒

ワインは一番きたない安宿を
   奇跡的な豪奢に覆うことができる、
そして伝説の柱廊をひとつならず出現させる。
   赤い蒸気の金色のなかに、
ちょうど曇った空のなかに沈む太陽のよう。

阿片は限界のないものを広げ、
   無制限を伸長する、
時間を深くし、逸楽を掘り下げ、
   そして黒く陰気な快楽を
魂にその容量を超えて満たす。

そんなことすべてが及ばないものは毒、
   それが流れてくるのは君の眼、君の緑の眼、
湖、そこでは私の魂が震え私の姿を裏返しに見る . . .
   私の夢々は渇きをいやすために
苦いその渦巻に大挙してやって来る。

そんなことすべてが及ばないものは恐るべき驚異の
   君の唾液、それは腐食する、
それは私の魂を後悔なく忘却のなかに沈める、
   そして、めまいを押し流し、
衰弱したその魂を死の岸辺へ転がす!


48 小瓶 Le Flacon

         48 小瓶

強い香りがある、それにとってはどんな物質も
多孔質だ。それはガラスを貫くとも言えよう。
オリエントから来た小箱を開けることによって、
そのとき錠前がきしみ嫌がって叫ぶのだが、

または無人の家で、あるタンスを開けることによって、
それは刺すような歳月の匂いに満ち埃をかぶって黒い
のだが、時おり見いだすのは心にとめている古い小瓶。
そのなかから生き生きとほとばしるのだ、蘇る魂が。

千の思考が眠っていた。陰気なさなぎたち、
重い暗闇のなかで穏やかに震えて。
それらが、はねをのばし、飛び立っている。
紺碧に薄く色づき、薔薇色の光沢で、金のラメで。

心酔わせる思い出がある。不安げななかに浮かんで
いるが。眼が閉まる。「めまい」が
負けた魂をつかみ両手で押している、
人間の瘴気に覆い隠された深淵へと。

「めまい」が魂を古い深淵の縁に投げ飛ばす。
そこでは、においを発し屍衣を引き裂くラザロが、
目覚めのなかで動いている。幽霊のような死体。
すえたにおいで魅力的で墓を思わせる古い恋のだ。

それで、私が人々の記憶のなかで忘れられたとき、
陰気なタンスの片隅の、老化した、埃まみれの、
きたない、卑しい、ぬるぬるした、ひび割れた、
悲しみの古い小瓶のように私を人が捨てたとき、

私は君の棺桶になろう、愛すべき疫病!
君の力と君の毒性の証人になろう、
いとしい毒、天使たちによって調合されている!
私を蝕んでいるリキュール、オー私の心の生と死!


47 夕べのハーモニー Harmonie du soir


      47 夕べのハーモニー

今、時が来て、茎の上で震えながら
それぞれの花が香炉のように香りを発散する。
それらの音と香りは、夕べの空気のなかを回っている。
憂鬱なワルツ、悩ましいめまい!

それぞれの花が香炉のように香りを発散する。
ヴィオロンが苦しむ心のように震えている。
憂鬱なワルツ、悩ましいめまい!
空は大きな聖体仮安置所のように、悲しくて美しい。

ヴィオロンが苦しむ心のように震えている。
優しい心のように。それは広大で暗い虚無を憎む!
空は大きな聖体仮安置所のように、悲しくて美しい。
太陽は自分の固まる血のなかで溺れた。

優しい心、それは広大で暗い虚無を憎む、
輝かしい過去からすべての遺跡を受け取る!
太陽は自分の固まる血のなかで溺れた. . .
君の思い出は聖体顕示台のように、私のなかで輝く!


46 霊的な曙 L'Aube spirituelle


        46 霊的な曙

放蕩者らの店に、白と紅の曙が
心をさいなむ「理想」と一緒にさし込むとき、
復讐する神秘の作用により
まどろむ獣のなかに一人の天使が目を覚ます。

「霊的な天」近寄りがたい紺碧は、
打ちのめされ、なおも夢み苦しむ男のために、
深淵の吸引力をともなって、開き奥深く続いている。
したがって、いとしの「女神」、明快で純粋な「存在」、

愚かな乱痴気騒ぎのくすぶる残骸のうえに
君の思い出は、もっと明るくばら色で愛らしくて、
大きくした私の眼に絶えず浮かんでいる。

太陽はろうそくの炎を黒くした。
したがって、いつも勝ち誇る、君の幻影は、
不滅の太陽に似ている。輝く魂!


45 告白 Confession

         45 告白

一回、ただ一度、愛想のよい優しい女、
   私の腕に磨かれたあなたの腕が
もたれかかった(我が魂の暗い背景のなかで
   あの思い出は少しも色あせない)。

遅い時刻だった、新しいメダルのように
   満月は誇示していた、
そして夜の荘厳は、大河のように、
   眠るパリの上を流れていた。

そして家々に沿って、それぞれの表門の下を、
   猫たちはこっそり立ち寄っていた、
聞き耳を立て、あるいは、親しい亡霊のように、
   ゆっくり私たちに同行するのもいた。

突然だった、ほのかな光の下で花ひらいた、
   自由な親しさのなかで、
輝かしい陽気しか振動しない、
   豊かでよく響く楽器のあなたから、

きらめく朝のファンファーレのように
   明るく楽しいあなたから、
愁いに満ちた音色が、奇妙な音色が
   よろめきながら漏れ出た、

まるでひ弱で、醜く、陰気で、汚い女の子のように。
   彼女の家族が赤面し、
彼女を世間から隠すために、穴倉のなかに
   長く秘密にしていたであろう女の子だが。

哀れな天使、甲高いあなたの音色が歌っていた。
   「何もないわ、この世で確かなものは、
そして相変わらず、どんなに入念にお化粧しても
   表れるのは人間のエゴイズム

美しい女であることは、つらい務め、
   でも平凡な仕事よ、
機械的に微笑して、うっとりする
   浮かれて冷たい踊り子の!

人の心の上に建物を築くのは、愚かなこと、
   愛と美はすべて裂ける、
『忘却』がそれらを『永遠』に返すために
   背負いかごにそれらを投げ入れるまで!」

私はしばしば思い起こした、あの魔法めいた月を、
   あの沈黙とあの憂愁を、
そして、心の告解室でささやかれた
   あの恐ろしい打ち明け話を。


44 可換性 Réversibilité


         44 可換性

陽気でいっぱいの天使、あなたはご存じか、苦悩を、
恥辱、悔恨、すすり泣き、心配事を、
そして漠然とした恐怖を、それは皺くちゃにした紙の
ように心臓を締めつける、あの恐ろしい夜々のものだが?
陽気でいっぱいの天使、あなたはご存じか、苦悩を?

善意でいっぱいの天使、あなたはご存じか、憎悪を、
暗闇で握られた両の拳、苦汁の涙を、
「復讐」が地獄の集合太鼓を打ち鳴らし、
我々の能力の隊長になるときだが?
善意でいっぱいの天使、あなたはご存じか、憎悪を?

健康でいっぱいの天使、あなたはご存じか、「熱病」を、
それは青白い施療院の高い壁に沿って、
流刑者たちのように、のろのろした足どりで立ち去る。
まれな太陽を求め唇をうごめかして?
健康でいっぱいの天使、あなたはご存じか、「熱病」を?

美でいっぱいの天使、あなたはご存じか、々を、
老いることの恐れを、あの忌まわしい苦痛を、それは
渇望する我々の眼が長年味わった眼のなかで
献身のひそかな嫌悪を読むときのものだが?
美でいっぱいの天使、あなたはご存じか、皺々を?

幸福、喜び、光でいっぱいの天使、
瀕死のダヴィデ王は君の魔力ある体の霊気に
健康を求めたかもしれない。
だが君に私がこい願うものは、天使、君の祈りしかない、
幸福、喜び、光でいっぱいの天使!


43a 陽気すぎる人に A celle qui est trop gaie


      43a 陽気すぎる人に

君の頭、君の仕草、君の雰囲気は
美しい風景のように美しい。
その笑いは君の顔に戯れる。
明るい空の爽やかな風のように。

君がすれ違う陰気な通行人は
君の健康に目がくらむ。
それは君の両腕から、両肩から
光のようにほとばしっている。

よく反響する色彩は
君の装いにちりばめられているが
詩人の精神に
花々のバレーのイメージを投げ入れる。

それらの気違いじみたドレス
色とりどりの君の精神のエンブレムだ。
気違いじみた女、私が恋に狂った人だ。
私は君を憎む、私が君を愛すると同じくらい!

時どき美しい庭のなかで
そこは私が自分の無気力を引きずっていたが、
私は太陽が私の胸を引き裂くのを
皮肉のように感じた。

そして春と草木の緑が
私の心をとても侮辱した、
それで私は一輪の花に対して
「自然」の無礼を罰した。

したがって私は、ある夜、
快楽の時間の鐘が鳴るとき、
君の体にあるそれらの宝物へ、
臆病者のように、音もなく這い進みたいものだ、

うれしい君の肉体を懲らしめるために、
赦された君の乳房を傷つけるために、
それから驚いた脇腹に
大きく開いた傷をつけたいと思う、

そして、目くるめくばかりの甘美!
もっと輝き、もっと美しい
この新しい唇を通して
私の毒液を君に注ぎたいものだ、我が妹!


43 生きている松明 Le Flambeau vivant

      43 生きている松明

彼らは歩く、私の前を。これらの「眼」は光に満ち、
ある博識な「天使」が、おそらく磁化させた物だ。
彼らは歩く、これらの神々しい兄と弟は、私の兄弟で、
私の両目にダイヤのように輝く炎の衝撃を与えながら。

私をすべての罠から、すべての重いシンから救いながら、
彼らは私の歩みを「美」からの道へ連れて行く。
彼らは私のしもべで、私は彼らの奴隷だ。
すべての私の存在は、この生きている松明に従う。

すてきな眼々、君たちは神秘の光で輝いている。
それは白昼に燃える数々の大蝋燭が持つ物だ。太陽は
赤く燃えている、だが幻想の彼らの炎を消しはしない。

それらの蝋燭は「死」を称え、君たちは「目覚め」を歌う。
君たちは歩く、私の魂の目覚めを歌いながら。
星々だ、どんな太陽もその炎を衰えさせられない!


42 <今宵君は何を語る. . .>< Que diras-tu ce soir...>

 
   42 <今宵君は何を語る. . .>

今宵君は何を語るのか、孤独で哀れな魂、
君は何を語るのか、我が心、かつてしおれた心、
実に美しい人に、実に優しい人に、実に愛しい人に、
神々しいその眼差しが君を突然、再び花を咲かせた人に?

― 我々は誇りをもって彼女の賛辞を歌いましょう。
何ものも、彼女の威厳の優しさにはかないません。
彼女の霊的な肉体は天使の香りを持ち、
彼女の目は我々を光の衣で包みます。

夜のなかでも、孤独のなかでも、
街のなかでも、群衆のなかでも、
彼女の幻影は空に舞う。松明のように。

時おりそれは話しかけて言う、「私は美しい、それで私の愛
のために、あなたが<美>しか愛さないことを私は命じる。
私は<守護天使>、<美神>そして<聖母>です!」


41 すべて完全な Tout entière

      41 すべて完全な

「悪魔」が、高所にある私の部屋へ、
今朝、来て私に会った、
そして、私の過ちの現場をわざと押さえるつもりで、
私に言った、「わしは、よく知りたいものだ、

彼女の魅力がつくられている
すべての美しいもののなかで、
彼女の魅了する体を構成する
黒の、あるいはピンクの物体のなかで、

最も甘美なものは何かな。」― オーわが魂!
君は「嫌われ者」に答えた、
「彼女については、すべてが癒しの薬草だ、
何も選ばれることはできない。

すべてが私をうっとりさせるのに、何かが私の
心をとらえるのかどうかなんか、私は知らない。
彼女は曙の女神のように目をくらまし
夜の女神のように慰める。

そしてすべての彼女の美しい体をつかさどる
その均整はあまりにも上品である。
無力な分析によって
その多数の和音を記譜するには。

オー神秘のメタモルフォーゼ
すべての私の感覚がひとつに溶け合っている!
彼女の吐息は音楽をなす、
彼女の声が芳香をなすように!」


40 彼女ハイツモ同ジ Semper eadem


     40 彼女ハイツモ同ジ

あなたは言った、「どこからあなたに来るの、黒い裸の
岩に向かう海のように上がる、この奇妙な悲しみは?」
― 我々の心がひとたび収穫をしてしまえば、
生きることはひとつの災いだ。それは誰もが知る秘密、

きわめて単純で不思議のない苦痛、
それも、あなたの喜びのように、誰に対しても明らかだ。
だから探し求めるのはやめなさい、オー詮索好きな美女!
そして、あなたの声は心地よいが、黙りなさい!

黙りなさい、無知さん! いつも有頂天なあなた!
子供っぽい笑いの口もと! 「生」よりもさらに
「死」は、微妙な紐で私たちをしばしば掴む。

そのまま、そのままにさせておくれ、私の心が嘘に酔う
のを、美しい夢想のようにあなたの美しい眼に
飛び込むのを、あなたのまつ毛の陰に長くまどろむのを!


39 <私はこれらの詩を. . .> <Je te donne. . .>


    39 <私はこれらの詩を. . .>

私はこれらの詩を君に与える、その目的は、
もし私の名が幸運にも遠い後の時代に着岸し、
ある晩、人間たちの脳に夢を見させるならば、
大いなる北風に恵まれた大船

君の記憶が、不確かな伝説に似て、
ツインバロンのように読者を疲れさせ、
そして友愛の神秘な鎖の環によって
私の尊大な詩につるされたままにするためだ。

呪われた存在、君に、深淵から
空の最高まで、私のほかに、何も答えない!
― オー君は、はかない痕跡の影のように、

軽い足どりと晴朗なまなざしで踏みにじる、
君を苦いと判断した愚かな人間たちを、
黒玉の眼の彫像、青銅の額の偉大な天使!


Ⅳ 肖像 Le Portrait


            Ⅳ

            肖像

病気」と「死」は、灰にするのだ、
我々のゆえに燃え上がったすべての火について。
あんなに熱烈であんなに優しいあの大きな両眼について、
私の心が溺死したあの口について、

ハナハッカのように力強いあれらのキスについて、
日の光よりも激しいあれらの興奮について、
何が残っているのか? ぞっとする、オー愛しの人!
ただ一枚のデッサンだけだ、色淡く三色で描かれている、

それは、私のように、孤独に死ぬ、
そしてそれを「時」が、無礼な老人だが、
毎日あの粗野な翼でこすりつける. . .

「生」と「芸術」の黒い暗殺者、
おまえは私の記憶のなかで決して殺しはしまい、
我が快楽、我が栄光であった女を!


Ⅲ 額縁 Le Cadre


            Ⅲ

            額縁

美しい額縁は絵画に、その絵画が
褒めちぎられた筆づかいであろうとも、
広大な自然からそれを孤立させていて、
何か魅了する一風変わったものを付け加える。

そのように、アクセサリー家具、金属、金箔は、
彼女の稀な美しさにちょうど合っていた。
何ひとつ彼女の完全な輝きを曇らせるものはなく、
すべてが彼女の縁飾りになっているようだった。。

すべてが彼女を愛したがっていると、
時々彼女は信じさえもしていたようだ。彼女が
気持ちよさそうに溺れさせていたのは、彼女の裸体、

繻子と下着からのキスのなかで。
そして、ゆっくりとまたは急激に、それぞれの動きに
高まっていたのは、猿の子供っぽい魅力。


 Ⅱ  香り  Le Parfum

       
            Ⅱ

            香り

読者、君は時々吸ったか、
陶酔してゆっくり味わうように、
教会を満たす粒の香りを、
または、匂い袋からの根深い麝香を?

魔法の、深い魅力、それは現在のなかの
復元された過去が我々を酔わせるのだ!
したがって恋する男は熱愛する肉体から
思い出の甘美な花を摘む。

彼女の髪から、それはしなやかで重く、
生き生きした匂い袋、閨房の香炉だが、
野生と野獣の匂いが立ち昇っていた、

そして衣服から、それはモスリンかビロードで、
純粋な彼女の若さが全てしみ込んでいるが、
毛皮の香りが発散していた。


38 幻影 Un fantôme Ⅰ 暗闇 Les Ténèbres

         38 幻影

            Ⅰ

            暗闇

はかり知れない悲しみの穴倉のなかで、
そこでは「運命」が私をすでに追いやっている、
そこではバラ色で明るい光が決して入らない、
そこでは不機嫌な女主人の「夜」と一緒の孤独で、

私は、ある嘲る「神」によって、アー!、暗闇に
絵を描くことを強いられた画家のようだ、
そこでは陰気な食欲のある料理人で、
私は、自分の心臓を煮て食べる

ときどき輝き、身を伸ばし、横になる
ひとつの亡霊は優美と華麗を見せている。
東洋風の夢見がちな様子で、

それが全身を現すとき、
我が美しい客を私は覚えている、
「彼女」だ! 黒い、それでも輝いている。


37 取りつかれた男 Le Possédé


      37 取りつかれた男

太陽は喪のヴェールで覆われた。そのように、
オー我が命の「月」!、影で君を包みなさい。
好きなように眠るか喫いなさい、黙って暗くいなさい、
そして「倦怠」の深淵にすべてを沈めよ。

私はそんな君が好きだ! それでも、もし君が今日
薄暗がりから出てくる食の天体のように、
「狂気」あふれる場所で羽根を広げて歩きたいのなら、
それも結構! 魅力の短剣、鞘からおどり出よ!

君の瞳を灯せよ、シャンデリアの炎で!
欲望を点火せよ、無礼な者たちの視線に!
君のすべては私の快楽だ、不健全でも活発でも。

君が望むものになるがいい、黒い夜、赤い曙。
私の震える全身の線維の一本でも叫ばないものはない、
「オー我が愛しのベルゼビュート、君が大好きだ!」


36 バルコニー Le Balcon


       36 バルコニー

思い出を創る人、愛人のなかの愛人、
オー君、すべての我が快楽!オー君、すべての我が務め!
君は思い出しなさい、愛撫の美しさ、
暖炉の心地よさ、夜々の魅惑を、
思い出を創る人、愛人のなかの愛人!

それらの夜々、石炭の炎に照らされていた、
それらのバルコニーの夜々、バラ色の靄に包まれていた。
なんと君の胸が甘美で、なんと君の心が優しかったことか!
私たちは不滅の事をよく語った、
それらの夜々、石炭の炎に照らされていた。

なんと刻々の太陽は美しいことか、暑い夕暮れのなかで!
なんと空間は深く、なんと心は力強いことか!
君の方へ身を傾ければ、あがめられる女たちの女王、
私は君の血の香りをかぐ気がしていた。
なんと刻々の太陽は美しいことか、暑い夕暮れのなかで!

夜は隔壁のように厚くなっていた、
私の眼は闇のなかに、君の瞳をさぐりあて、
君の吐息を飲んだものだ、オー甘美! オー毒!
君の両足は、親しげな私の両手のなかで眠っていた。
夜は隔壁のように厚くなっていた。

私は幸せの一瞬一瞬を思い起こす術を知っている、
そして過去を再び生きている、君の膝の間にかがんで。
というのは、君の物憂げな美しさを求めても何になろう、
君のいとしい体、君のこれほど甘美な心のほかに。
私は幸せの一瞬一瞬を思い起こす術を知っている。

あれらの誓い、あれらの香り、あれらの無限のキスは、
我々の測鉛を禁じられた深淵から、蘇るだろうか、
太陽が深い海の底で洗われた後、
若返って空に昇るように?
― オー誓い! オー香り! オー無限のキス!


35 一騎打ち Duellum


       35 一騎打ち

二人の戦士は向き合い駆け回った。彼らの武器は
空中にきらめきと血を跳ね上げた。
これらの遊戯、これらのチャリンという剣の音は、
泣いている恋にとらわれた、青春の大騒ぎだ。

剣は折れる、我らの青春のように、
我が恋人! だが歯、鋭い爪が、
裏切った剣や短剣の敵討ちをすぐにする。
― オー 痛手を負った恋による賢明な心の激高!

サーバルキャットや雪豹の出没する峡谷に
我らが勇士らは、意地悪に取っ組み合って転げ落ちた、
彼らの皮膚は乾いた茨に花で飾るだろう。

― この裂け目は、地獄だ、我らの友が一杯いる!
後悔なくそこに転げ落ちよう、冷酷無情なアマゾネス
我らの憎悪の激しさを不滅のものにするために!


34 猫 Le Chat

        34 猫

来なさい、私のきれいな猫、恋する私の心臓の上に。
  引っ込めなさい、君の足の爪は、
そして私を飛び込ませよ、金属とメノウの混ざった
  君の美しい眼のなかに。

私の指が君の頭や君の柔軟な背を
  心ゆくまで愛撫する時、
私の片手が電気を帯びた君の体に
  触る喜びに酔う時、

私は心のなかに私の妻が見える。彼女の視線は、
  愛らしい獣、君の視線のように、
深く冷たく、投げ槍のように切り、裂く、

  そして、両足から頭まで、
巧妙な空気、危険な香りが
  彼女の褐色の体の周りを漂っている。


33 死後の後悔 Remords posthume


       33 死後の後悔

大理石で建てられた墓の底に、
我が愁いの美女、君が眠るであろう時、
そして閨房として、館として、雨の滴る
地下墓所、虚ろな墓穴でしか君が持てないであろう時、

墓石が、君の臆病な胸と、
すてきな無頓着が柔らかくする両脇腹を圧迫していて、
君の心臓の脈打ち欲することを、
君の両足の奔放に駆け走ることを妨げるであろう時、

その墓は、私の無限の夢の腹心だが、
(なぜなら墓はいつも詩人を理解するであろうから)、
眠りが追放されたそれら多大な夜々のあいだ、

君に言うだろう、「何になる、不完全な遊女、死者たちが
嘆いているものを、あなたが知らなかったとしても?」
― そして蛆虫は君の肌をかじるだろう、後悔のように。


32 <ある夜、私がひどい. . . > <Une nuit que j'étais. . .>

    32 <ある夜、私がひどい. . . >

ある夜、私がひどいユダヤ女のそばに、
死体に寄り添う、横になった死体然でいたとき、
私はこの身を売った肉体のそばで、急に思い始めた、
私の欲望が自ら禁じている、その悲しい美女のことを。

私が思い浮かべていたのは、生まれながらの彼女の威厳、
力強さと優美さで武装された彼女の眼差し、
彼女の髪。それは芳香の兜であり、
その記憶が私を愛へと復活させる。

というのは、私は熱烈に君の高貴な体にキスしただろうし、
君のひんやりした足から黒い編み毛まで
深い愛撫の宝を展開しただろうから、

もし、ある晩、努力しないで得られた一滴の涙で、
君がただ、オー残酷な女たちの女王!、
冷たい瞳の輝きを曇らせることができたなら。


31a 忘却の川 Le Léthé


       31a 忘却の川

来なさい、私の心臓の上に。残酷で聞く耳のない人、
愛される虎、物憂げな雰囲気の怪物。
私は震える指々を長く沈めていたい、
君の重いたてがみの密なところに。

君の香りに満ちたペチコートのなかに
私の痛い頭をうずめ、
嗅いでいたい、枯れた花のような、
過ぎ去った私の恋の懐かしい臭いを。

私は眠りたい! 生きるよりは眠りたい!
死と同じほど甘美な眠気のなかで、
私は悔いなくキスを並べよう、
銅のように艶のある君の美しい体に。

私の静められた嗚咽を飲み込むのに
君の寝床の深淵は有害だ。
強い忘却は君の口に居ついている、
それで忘却の川は君のキスのなかを流れている。

私の運命に、今や私の快楽だが、
私は従おう、救霊予定者のように。
従順な殉教者、無実の受刑者、
その熱意が刑罰をあおっている者だ。

私の恨みを溺れさせるために、私は吸おう、
憂さ忘れの薬を、よい毒人参の汁を、
とがったこの胸の魅惑的な二つの先端で。
そこに一度も心を閉じ込めたことはないが。


31 吸血鬼 Le Vampire


        31 吸血鬼

君、ナイフの一撃のように、
悲しげな私の心に入った人。
君、悪魔の群れのように強く、
浮かれ、着飾って、来た人、

侮辱された私の精神を
君のベッドと君の領地にする人。
― 破廉恥、それに私は結ばれている。
徒刑囚と鎖のように、

頑固なばくち打ちと賭博のように、
酒飲みと酒瓶のように、
死骸と蛆虫のように。
― 呪われてあれ、呪われてあれ、君は!

私は素早い剣に
私の自由を勝ち取ってくれと頼んだ。
そして私は危ない毒薬に
私の臆病さを救ってくれと命じた。

アー! 毒薬と剣は
私を軽蔑し、私に言った、
「呪われた君の隷属状態から君を
持ち上げる値はない、

愚か者! ― 彼女の支配から
我々の努力が君を解放しても、
君の接吻は復活させるだろう、
君の吸血鬼の死体を!」


30 深淵ヨリ我叫ビヌ De profundis clamavi


     30 深淵ヨリ我叫ビヌ

私は君の同情を哀願する、君、私の愛する唯一の人、
私の心が落ちた暗い深淵の底から。
これは鉛色の地平にある陰鬱な世界、
そこに漂うのは恐怖と冒瀆の言葉。

熱のない太陽は六箇月、見おろし
他の六箇月は、夜が地上を覆う。
それは、極地よりも裸同然の国。
― 獣も、小川も、草木も、森もない!

さて、氷の太陽の冷酷な厳しさ、
そしてはるか昔のカオスに似たこの無限の夜、
この世にそれらをしのぐ恐怖はない。

私はこの上なく卑しい動物たちをうらやむ。
かれらは馬鹿のような眠りに没頭できる。
非常にゆっくりと時の桛は繰られる!


29 腐った死骸 Une charogne


        29 腐った死骸

思い出しなさい、いとしい人、心地よい夏の
  あの晴れた朝、我々が見た物を。
小道の曲がり角に、忌まわしい腐った死骸が
  小石のまかれたベッドの上で、

両足を空中にあげ、好色女のようだが、
  焼けて毒をにじませ、
無頓着で冷笑的な仕方で
  悪臭に満ちた腹を開いていた。

太陽はその腐った物の上に光り輝いていた。
  ほとんどそれを程よく焼くために、
偉大な「自然」が一緒につなげていた物の全てを
  そこに百倍にして返すために。

そして天は見事な死骸が花のように
  咲いているのを眺めていた。
悪臭はあまりにも強く、草の上に
  あなたは気絶すると思った。

蠅たちは腐敗したその腹の上をぶんぶん飛んでいて、
  そこから蛆虫らの黒い大隊が外へ出てきていた。
それらは生きているその残骸をつたって
  濃い液体のように流れていた。

すべてそれらは、波のように下がり上がりして、
  ぱちぱちと飛び出していた。
言うなれば、その肉体は、あいまいな息吹でふくらみ、
  自ら繁殖させながら生きていたのだろう。

そしてその世界は奇妙な音楽を発していた、
  流水や風のように。
または、穀粒のように。リズミカルな動きのその選別人が
  蓑のなかで、それをゆさぶり回している。

形は消え、もはや夢で、達成するには遅い
  下絵でしかなかった。
画布の上に忘れられ、それを画家が
  思い出によってのみ仕上げるのだが。

岩に隠れて、不安げな雌犬が
  怒った目で私たちを見ていた。
その犬が骸骨にあって口から落した
  肉片を取り戻す時をうかがいながら。

― しかしながら、あなたはその汚物、
  恐ろしく悪臭を放つ物に似るだろう。
我が眼の星、我が自然の太陽、
  我が天使にして我が情熱のあなたも!

そうです! そのようにあなたもなる、オー優美の女王。
  臨終の秘跡の後、
あなたが草と開花の下へ行き、骸骨らの間で
  黴が生えるときに。

その時、オー我が美人! あなたにキスを浴びせる
  害虫に言いなさい、
私の分解された恋愛の、形と神聖な本質を
  私は守っていると!


28 踊る蛇 Le Serpent qui danse


         28 踊る蛇

なんて私は好きなのだろう、物憂げさん、
   これほど美しい君の体を見るのが、
ゆらめく布地のように、
   その肌がきらめくのが!

きつい香りのする
   奥深い君の髪、
青と褐色の波のある
   芳香と気まぐれの海のうえに、

ちょうど、朝の風に
   目覚める船のように、
夢想にふける私の魂は、
   はるかな空に向けて出航準備をする。
   
君の眼は、甘美も苦みも
   何も表さないし、
冷たい二つの宝石だ、
   それは金と鉄を混ぜている。

君が拍子をとって歩くのを見ると、
   くつろぎの美女、
まるで棒の先で踊る
   蛇のようだ。

怠惰の重荷で
   子供のような君の頭は
おさない象のように
   柔らかく揺れ、

君の体は傾き長々と横たわる。
   ひどく横揺れし
帆桁を水中に沈める
   細い船のようにして。

氷河がうなり溶けて
   増大された流れのように、
君の口の水が
   歯々の縁まで高まるとき、

私が飲んでいると思うのは、苦くて
   勝利者のボヘミヤのワイン
私の心に星々をちりばめる
   液体の空!


27 <波打つ真珠光沢の. . . > <Avec ses vêtements. . . >


     27 <波打つ真珠光沢の. . . >

波打つ真珠光沢の衣装をつけて、
彼女は歩く時でも、踊っているようだ、
長い蛇たちのように。それらは聖なる芸人たちが
棒の先に拍子をとって揺り動かしている。

砂漠の陰気な砂や青空のように。
二つとも人間の苦悩に無関心だ。
海のうねりによる長い網々のように
彼女は平然と展開している。

磨かれた彼女の眼は、魅力の鉱物でつくられ、
この奇妙で象徴的な自然のなかで、
その犯されない天使が古代のスフィンクスと交じり、

すべてが金、はがね、光、ダイヤモンドでしかなく、
そこで無用の星のように、永遠に輝くのは、
不妊の女の冷たい威厳。


26 サレド女ハ飽キタラズ Sed non satiata


      26 サレド女ハ飽キタラズ

奇妙な女神。夜のように浅黒く、
麝香とハバナたばこの混じった香りがする。
ある呪術師、草原のファウスト博士、の作品、
黒檀の脇腹をした女魔法使い、真夜中の闇からの子、

私が好むのは、コンスタンスワイン、阿片、ニュイの
ワインよりも、君の口の妙薬だ、そこで恋が気取って歩く。
君に向って私の欲望たちが団体で動き出す時、
君の眼は貯水池だ、そこは私の倦怠を飲み込む。

これらの大きな黒い両目、君の魂の風穴、から
オー哀れみのない悪魔! 私にあまり炎を注ぐな。
私は君を9回抱くための冥界の川ではない。

悲しや! しかも私はできない、みだらな復讐の女神、
君の熱意を打ち砕き、君を追いつめるために、
君の寝台の地獄において冥界の女神になることが!


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