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72 陽気な死者 Le Mort joyeux

      72 陽気な死者

豊かな地面に、それもエスカルゴでいっぱいだが、
私は深い穴を自分で掘りたい、
そこに私はゆっくりと私の古くからの骨を並べ
忘却のなかに眠っていいだろう、波間の鮫のように。

私は遺言が嫌いだ、そして墓が嫌いだ。
世間の一粒の涙を懇願するくらいなら、
生きながら、私は烏らを招き、
私の不浄な体の端々まで血まみれにつつかせよう。

オー蛆虫ら! 闇の仲間ら、耳がなく目もないな、
見よ、君らの方に、自由で陽気な死者が来るぞ。
悟りすました道楽者ら、腐りきった息子ら、

私の残骸を通って行け、悔いを残さないように、
そして私に言え、まだ何か責め苦があるかどうか、
魂のない死人らのなかの死人の、この古い体にとって!


71 幻想的版画 Une gravure fantastique


      71 幻想的版画

この奇妙な亡霊の身なりと言えば、
骸骨の頭のうえに珍奇にかぶった
恐ろしげな王冠だけだ、謝肉祭の匂いもする。
拍車や鞭なしで、彼は馬を息切れさせている、
馬も彼のように幽霊で、黙示録のような駄馬、
癲癇のように鼻から泡を吹いている。
空間を切って人馬はともに突き進み、
無限を踏みにじる、無謀な蹄で。
騎手は炎のサーベルを振り回す、
その馬が押しつぶす名もない人込みの上で
それから駆け巡る、館を巡視する王子のように、
広大で寒く、果てしない墓地を、
そこに横たわるのは、白くくすんだ太陽の微光を受けた
古今の歴史の国民たち。


70 埋葬 Sépulture


        70 埋葬

もし重く陰気なある夜に
善きキリスト教徒が、慈悲心から、
どこかの古い廃墟の裏に
虚栄のあなたの体を埋葬するなら、

その時刻は、純潔の星たちが
重くなった目を閉じる時だが、
蜘蛛はそこに巣を、
マムシは子供を作るだろう、

一年中あなたが聞くことになるのは
断罪されたあなたの頭上での
狼や腹をすかせた魔女の

ひどい叫び声、
好色老人の大はしゃぎ、
腹黒い詐欺師の陰謀。


69 音楽 La Musique


        69 音楽

音楽は私をしばしば捉えるのだ、ある海のように!
   私の淡い星に向かって、
霧の天井のもと、または広大なエーテルのなか、
   私は帆走につく。

張り出す胸とふくれた肺
   帆のようだ、
私は積み重なる大波の背を乗り越えている、
   夜の闇が隠すのはそれらの大波。

私は感じている、苦しむ船のあらゆる熱情が
   私の中で震えるのを。
順風、嵐、それらによる大混乱は

   巨大な深淵の上で
私を揺すっている。別の時には、べた凪、大いなる鏡
   我が絶望のだ!


68 パイプ La Pipe


        68 パイプ

私はある作家のパイプなんです。
アビシニアかカフラリア出身の
私の顔つきをよく見れば、私の主人が
ヘビースモーカーだとわかるでしょ。

彼が苦痛で満たされた時、
私は煙を出すの、藁屋のようにね、
そこでは農夫の帰りのために
料理が準備されているの。

私は彼の魂を抱きしめ揺すってあげる、
青くゆらぐパイプ網のなかのこと、それは
燃えている私の口から立ちのぼるわ。

それから私は強力な慰めのハナハッカをまぶすの、
それは彼の心をうっとりさせ、
彼の精神の疲れを癒してあげるの。


67 ミミズクたち Les Hiboux


      67 ミミズクたち

彼らを守るイチイの木のなかに、
ミミズクたちは並んでいる、
異国の神々のように、
赤い目を投げかけて。彼らは瞑想している。

動かずに、彼らはじっとしているだろう、
憂鬱の時まで、
それは傾いた太陽を押しやって、
暗闇が生じる頃。

彼らの姿勢が賢者に教えるのは、
この世で恐れなければならない
動乱と運動。

過ぎ去る影に酔うその人が
いつも負っているのは、
場所を変えたがっていたことの懲罰。


66 猫たち Les Chats


        66 猫たち

熱烈な恋人たちや謹厳な学者たちが
熟年になると、等しく愛するのは猫たち、
たくましくて優しい、家の誇り、
彼らのように寒がりで、家にこもっている。

学問と快楽の友である猫たちが
探し求めるのは、沈黙と闇の恐怖。
暗黒神は猫たちを葬送の駿馬に使っただろうに、
もし猫たちがその誇りを隷属状態にしたならば。

猫たちは夢想しているとき気高い態度をとる、それは
人けのない奥底に横たわる、巨大なスフィンクスで、
果てしない夢のなかに眠り込んでいるようだ。

実り多いその腰は、魔法の火花に満ちている、
そして金の小片が、細かい砂のように、
かすかに星をちりばめている、その神秘の瞳に。


65 月の悲しみ Tristesses de la lune


       65 月の悲しみ

今夜、月は夢を見ている、もっとゆるやかに、
まるで美女が、多くのクッションのうえで、
うわの空の軽やかな片手によって、眠りにつく前に、
彼女の両乳房の曲線を愛撫するように。

柔らかな雪崩のサテンの背もたれのうえでは、
死ぬくらい、長い失神に身をゆだねている、
それから白い幻に視線を巡らせる、それは
花々が咲くように青空のなかを昇っている。

時にこの若い乳房のうえで、無益な物憂さから、
彼女が一筋のすばやい涙を落とすとき、
ひとりの敬虔な詩人、眠りの敵は、

彼の手のくぼみのなかに、この淡い涙をつかみ、
虹色に反映したオパールのかけらのようであるが、
それを彼のハートに入れておく、太陽の眼から離れて。


64 秋のソネット Sonnet d'automne


       64 秋のソネット

それらは私に言う、君の両目、水晶のように透明、
「変な人、あんたにとって私のいいとこって何?」
― 魅力的であれ、そしてしゃべらない! 私の心が、
太古の獣の無邪気さは別として、全く苛立っているが、

見せようとしないものは、地獄のようなその秘密と、
子守女その手で長い眠りを私に起こさせるのだが、
書かれた恋の炎を加えた黒い伝説もだ。
私は情熱を憎むし、エスプリは気分が悪くなる!

優しく愛しあおう。「キューピッド」は見張り小屋で、
腹黒く、待ち伏せて、運命の弓を引き絞る。
私は知っている、彼の古い武器庫にある飛び道具、

すなわち罪、恐怖そして乱心を! ― オー青白い
マーガレット! 私のように君も秋の太陽ではないのか、
オーそんなに白く、そんなに冷たい私のマルグリット?


63 現世に戻った者 Le Revenant


     63 現世に戻った者

野獣の目をした天使のように、
私は君の閨房に戻ってくる、
そして君に向かって音もなく
夜の影とともに滑り込む。

そして私が君に与えようとするのは、
我が褐色の女、月のように冷たいキスと
蛇の愛撫、
それは墓穴のまわりで這っているが。

鉛色の朝が来るとき、
君は私の場所が何もないのを知るだろう、
そこは宵まで冷たいままだ。

他の男らが君の生活と君の若さを
優しさによって支配するので、
私といえば、恐怖によって支配したい。


62 悲シミテサマヨフ MOESTA ET ERRABUNDA


      62 悲シミテサマヨフ

言って、君の心は時々飛ぶのか、アガート、
汚い都市の黒い大海から遠く離れて、
もうひとつの大海に向かって、そこは光輝が爆発し、
処女のように、青く、澄み、深い?
言って、君の心は時々飛ぶのか、アガート?

海、広大な海、我々の労苦を慰めよ!
どんな悪魔が海、うなる風の巨大なオルガンが
伴奏するしゃがれ声の歌姫に、子守歌の
その気高い役目を与えたのか?
海、広大な海、我々の労苦を慰めよ!

私を運んで行け、客車! 私を奪い去れ、快速帆船!
遠くへ!遠くへ!ここは泥が我々の涙でできている!
― アガートの悲しい心が時々言うのは本当か?
「悔いから、罪から、苦しみから遠くへ、
私を運んで行け、客車! 私を奪い去れ、快速帆船」

なんとあなたは遠くにいることか、芳香の楽園、
そこでは澄んだ青空のもと全ては愛と喜びだけ、
そこでは人の愛することの全ては愛されるに値する、
そこでは純粋な快楽のなかで心は溺死する!
なんとあなたは遠くにいることか、芳香の楽園!

さて幼い恋の緑の楽園、
競走、歌、キッス、ブーケ、
丘の後ろで響いているヴァイオリン、
夕暮れ、林のなかで、ワインの酒壺とともに、
― さて幼い恋の緑の楽園、

無邪気な楽園、ひそかな楽しみでいっぱい、
それはインドやシナよりも既に遠いのか?
嘆きの叫びでそれを呼び戻し、
銀の歌声で再び活発にできるのか、
無邪気な楽園、ひそかな楽しみでいっぱい?


61 クレオルの夫人に A une dame créole

  
   61 クレオルの夫人に

香りに満ち太陽が愛撫する国で、
私が知ったのは、真紅にすっかり染められた木々と、
眼に怠惰の雨を降らせる椰子からなる天蓋の下で、
知られざる魅力をもつクレオルの夫人。

彼女の顔色は青白くも暖かい。髪が褐色の魅惑の人は
その首に高貴で気取った様子をもっている。
背が高くすらりとして女狩人のように歩きながら、
彼女の微笑は穏やかで目は自信に満ちている。

もしあなたが、マダム、セーヌや緑なすロワールの
ほとりにある、真の栄光の国に行かれるのなら、
古い館を飾るのにふさわしい美女、

あなたは、鬱蒼とした隠れ家で、詩人らの心に
千のソネットを芽生えさせることになろう、あなたの
大きな目が彼らを黒人の召使らよりも従順にして。


60 ワガふらんきすかノ讃歌 FRANCISCAE MEAE LAUDES

   60 ワガふらんきすかノ讃歌

新シキ弦ニヨリテ我ハ貴方ヲ歌ハム、

以下未訳


59 シジナ Sisina

 
       59 シジナ

想像しなさい、ディアナが狩りの優雅な身なりで、
森を駆け巡り、あるいは、いばらの茂みを叩き、
髪や胸を風に向け、狩り子の騒ぎに酔い、
見事であり、最上の騎手たちを寄せつけないでいるのを!

君たちは見たか、殺戮を愛する女、テロワーニュが
靴のない民衆を襲撃に駆り立て、
頬と目を火にし、彼女の役割を演じ、
サーベルを拳に、王宮の階段を駆け上っているのを?

シジナのようだ! しかしその優しい女戦士は
殺意と同じくらい慈悲の魂をもっている。
彼女の勇気は、火薬と太鼓によって奮い立つが、

哀願者らの前では、武器を下に置くことができる、
そして彼女の心は、炎によって荒らされているが、いつも、
それにふさわしい相手には、涙の貯水池をもっている。


58 午後のシャンソン Chanson d'après-midi


      58 午後のシャンソン

意地悪な君の眉毛が
変な様子を君に与え、
天使には似てないが、
蠱惑の眼をしている魔女、

私は君を崇める、オー私の軽薄女、
私のすさまじい情熱!
偶像に仕える
司祭の信心のように。

砂漠と森の
香りがする、君の硬い編み毛には。
君の顔は、謎と秘密の
色々な見せかけをする。

君の体には香りがさまよう、
香炉の周りのように。
君は夕暮れのように魅了する、
黒いそして熱いニンフ。

アー! 最強の媚薬も
君の怠惰にはかなわない、
そして君は死者をよみがえらせる
愛撫を知っている!

君の腰が恋するのは
君の背中と君の乳房、
そして君はクッションの心を奪う
君の物憂げなポーズで。

時には、謎の熱狂を
静めるために、
君は、真剣に、
かみつき、キスしまくるのだ。

私の褐色の人、君は私を引き裂く、
嘲笑しながら、
それから君は私の心に
月のような君の優しいまなざしを注ぐ。

君のサテンの靴の下に、
君のかわいい絹の足の下に、
この私が置くのは、私の歓喜、
私の天分と私の運命、

君によって治された、私の魂、
君、光と色彩、によって!
盛りの爆発
私の黒いシベリアでの!


57 あるマドンナに A une Madone

 
         57 あるマドンナに

        スペイン様式の奉納物

私が君、マドンナ、我が愛人、のために築きたいのは、
私の苦悩の底における隠れた祭壇、
そして、私の心の最も暗い片隅に、世俗の欲望や
嘲る眼差しから遠く離れて穿ちたいのは
ニッチ、紺青と金色の七宝で飾られているが、
そこに君は「驚きのマリア像」として立つだろう。
水晶の韻で巧みにちりばめられた
純粋な金属の格子枠である、磨かれた私の「詩句」で、
私は君の頭のために驚くべき「冠」を作ろう。
そして私の「嫉妬」の布地から、オー死すべきマドンナ、
私は君に「マント」を一着裁つことができる、野蛮な
仕立てで、ごわごわして重く、疑惑の裏地がついていて、
それは見張り小屋のように、君の魅力を包みこむだろう。
刺繍は「パール」ではなく、すべての私の「涙」で!
君の「ドレス」、それは私の「欲望」、震えて、
波打つ、私の「欲望」は高まり、そして低くなる、
頂上では体を揺すり、小さな谷では憩い、
ひとつのキスで白とピンクの君の全身を覆う。
私が君に作るのは、私の「尊敬」の入った美しい「靴」、
サテン製で、神々しい君の両足に屈従されるもの、
それは、やわらかな抱擁で君の両足を閉じこめて、
忠実な鋳型のように、足の形を保つだろう。
もし私の入念な技をすべて使っても、
「踏み台」のために、ひとつの銀の「月」を
彫りだすことができないのなら、
私の心の底をかじる「ヘビ」を、君のかかとの下に
置こう、君、贖いに富んだ勝利の「女王」、が憎悪と
唾でふくれ上がったこの怪物を、踏みつけ嘲弄するために。
君は見るだろう、私の「思考たち」が、それらが「蝋燭」
のように立ちならんでいるのは、「処女たちの女王」で
花咲き、青く塗られた天井に照り映えて星をちりばめている
祭壇の前だが、火の目でいつも君を見つめているのを。
そして私のなかのすべてが、君を慈しみ感嘆するので、
すべては「安息香」、「薫香」、「乳香」、「ミルラ」となり、
絶え間なく、君、雪のある白い頂、の方へ、
「香霧」となって昇るだろう、嵐をはらむ私の「精神」は。

最後に、マリアという君の役を仕上げるために、
そして愛を残忍に混ぜるために、
黒い快楽! 七つの大「罪」で、
悔恨でいっぱいの死刑執行人の私は、研ぎすました
七つの「短剣」を作ろう、そして非情な曲芸師のように、
君の愛の最も深いところを的に選び、
私はそれらすべてを打ちこもう、あえぐ君の「ハート」に、
嗚咽する君の「ハート」に、血がしたたる君の「ハート」に!


56 秋の歌 Chant d'automne


        56 秋の歌

            Ⅰ

やがて我々は沈むだろう、寒い暗闇のなかに。
さらば、激しい光、我々の夏はあまりにも短い!
私はもう聞えている、たき木が陰気な音で落ちるのを、
それは中庭の敷石の上で鳴り響いている。

すべての冬が、私の存在のなかにもうすぐ戻る。怒り、
憎しみ、戦慄、恐怖、つらくて強いられた労働、
そして、極地の地獄のなかにある太陽のように、
私のハートは、もはや凍った赤い塊でしかないだろう。

私が震えながら聴くのは、落ちる各々の薪(まき)。
建設中の火刑台にも、これほど籠った反響はない。
私の精神は、敗北する塔によく似ている、
疲れ知らずで重い破城槌を何度も受けていて。

私には思える、この単調な音に揺らされると、どこかで
誰かが、あわただしく柩に釘を打っているように。
誰のために?― 昨日の夏だった、ここにある秋!
この不思議な物音は、ひとつの出発のように鳴っている。

            Ⅱ

私はあなたの切れ長の目の、緑がかった光が大好きだ、
優しい美人、しかし今日はすべてが私に苦い、
そして何も、あなたの愛も、部屋も、暖炉も、
私にとって、海上で光り輝く太陽には及ばない。

それでも私を愛してください、優しい人!母にもなって
ください、恩知らずの人、意地悪な人のためでさえ。
恋人か妹にもなってください、つかの間の優しさを、
それは輝かしい秋、沈みゆく太陽のよう。

短い仕事!墓が待っている。墓は貪欲!
アー!私にさせてください、私の額をあなたの膝に置き、
灼熱の白い夏を惜しみながら、
晩秋の穏やかで黄色い光を味わうことを!


55 おしゃべり Causerie


       55 おしゃべり

あなたは美しい秋の空、澄みわたりバラ色だ!
だが悲しみは、私のなかで海のように満ちてくる、
そして引き潮になると、私の不機嫌な唇に
苦い泥土の焼けつく思い出を残している。

― 君の手は空しく滑っている、ぼうっとした
私の胸の上を。恋人、その手が探すものは、女の爪と
凶暴な歯によって荒らされた場所だ。
もう私の心を探しなさんな、それは獣が食べた。

私の心は暴徒によって汚された宮殿だ。
奴らはそこで酔いしれ、殺しあい、髪をつかみあう!
― 香りが漂う、あなたの裸の胸のあたりに! . . .

オー美、魂に激しく災難を与える人、それが君の望みだ!
祭りのように輝く、君の炎の両目で、
獣らの食い残したこれらの残骸を焼き尽くせ!


54 修復不能 L'Irréparable

 
         54 修復不能

押し殺すことができるのか、古い、長い「悔恨」を?
  それは住み、うごめき、身をよじり、
我々を食べている、まるで死体の蛆虫のように、
  まるで樫の木の毛虫のように、
押し殺すことができるのか、容赦ない「悔恨」を?

どんな媚薬、どんなワイン、どんな煎じ薬のなかで、
  我々は溺れさせようか、この古い敵を?
それは破壊的で貪欲、娼婦のようで、
  アリのように忍耐強い、
どんな媚薬?―どんなワイン?―どんな煎じ薬のなかで?

それを言って、美魔女、オー!言って、おまえが知るなら、
  この心に、それは苦悩でいっぱいだ、
そして瀕死の人のようだ、負傷者らに押しつぶされ、
  馬の蹄に傷つけられていて、
それを言って、美魔女、オー!言って、おまえが知るなら、

死に瀕したこの男に、狼にもう嗅ぎつけられ、
  烏に見張られているが、
壊れたこの兵士に! 十字架と墓を持つことを
  彼が諦めねばならないかどうかを、
死に瀕した哀れなこの男、もう狼に嗅ぎつけられている!

輝かせることができるのか、泥まみれで黒い空を?
  引き裂くことができるのか、闇を
それはタールよりも濃く、朝も夕もなく、
  星もなく、不吉な稲妻もないが?
輝かせることができるのか、泥まみれで黒い空を?

「希望」は、「宿屋」の窓ガラスで光るも、
  吹き消され、永久に死んだ!
月も光線もなしで、悪い道の殉難者を
  泊める所を見つけるなんて!
「悪魔」は、「宿屋」の窓ガラスですっかり光を消した!

とても可愛い魔女、君は地獄に落ちる人達が大好きか?
  言って、容赦できないことを君は知っているか?
「悔恨」を知っているか、その毒矢が
  我々の心を的にしているが?
とても可愛い魔女、君は地獄に落ちる人達が大好きか?

「修復不能」が呪われた歯でかじる
  我々の魂、哀れな記念碑を、
そしてたびたび、シロアリのように
  土台から建物を攻撃する。
「修復不能」が呪われた歯でかじる!

― 私はときどき見た、よく響くオーケストラが
  燃え立つ、ありふれた劇場の奥で、
ひとりの妖精が、地獄の空に、
  奇跡のような夜明けの光をともすのを。
私はときどき見た、ありふれた劇場の奥で、

ある存在が、それは光と金と紗だけのものだが、
  巨大な「魔王」を地面に打ち倒すのを、
だが私の心は、決して陶酔が訪れなく、ひとつの劇場だ、
  そこで人は、いつまでも、いつまでも空しく待つ、
紗の両翼を持つ「存在」を!


53 旅への誘い L'Invitation au voyage


       53 旅への誘い

わが子、わが妹、
心地よさを思ってごらん
彼の地に行き、一緒に暮らすという!
  ゆっくり愛し、
  愛し、そして死ぬ
おまえに似ているその国で!
  曇った空からの
  ぬれたそれぞれの太陽には
私の心のための魅力がある
  それほど不可思議だ
  君の裏切りの眼が、
涙を通して輝いている。

あそこでは、すべてが秩序と美、
豪華、静寂そして逸楽だけ。

  艶のある家具たちは、
  歳月に磨かれているが、
私たちの寝室を飾るだろう。
  最もめずらしい花々が
  その匂いを
かすかな竜涎の香に交えるので、
  贅沢な天井、
  奥深い鏡、
東洋の華麗さ、
  すべてがそこで語りかけるだろう、
  ひそかに魂に
その生まれた所の優しい言葉を。

あそこでは、すべてが秩序と美、
豪華、静寂そして逸楽だけ。

見よ、あれらの運河に
  船々が眠っているのを、
気質は移り気のそれらだが。
  君の些細な望みを
満足させるためにだ、
それらが世界の果てからやって来るのは。
  ― 沈む刻々の太陽が
  覆うのは、田園、
運河、都市全体、
  だいだい色と金色で。
  世界は眠っている
暖かい光のなかで。

あそこでは、すべてが秩序と美、
豪華、静寂そして逸楽だけ。


52 美しい船 Le Beau Navire


       52 美しい船

私は君に話したい、オー柔らかな女魔術師!
君の若さを飾る、色々な美を。
  私は君の美を君に描きたい、
それは少女時代が成熟に混じっている。

君の大きなスカートで風を払って行くとき、
君は美しい船の印象を与えている、それは沖に出て、
  帆を張り、そして行く、横揺れして、
心地よい、怠惰な、遅いリズムに従って。

広くまるい君の首の上に、太った両肩の上に、
君の頭は、異国の優雅を現し、すましている。
  穏やかで絢爛豪華な様子にして
自分の道を行く君、威厳のある子供だ。

私は君に話したい、オー柔らかな女魔術師!
君の若さを飾る、色々な美を。
  私は君の美を君に描きたい、
それは少女時代が成熟に混じっている。

君の乳房、前に出てモアレ模様を押している、
君の乳房、勝ち誇っているが、美しい衣装箪笥だ、
  それらの中高で明るいパネルは
盾のようで、きらめきを帯びている。

挑発的な盾だ、ピンクの鋲を備えている!
甘い秘密の衣装箪笥、良いものでいっぱいだ、
  ワイン、香水、リキュール
それらは多くの脳と心を錯乱させるのだ!

君の大きなスカートで風を払って行くとき、
君は美しい船の印象を与えている、それは沖に出て、
  帆を張り、そして行く、横揺れして、
心地よい、怠惰な、遅いリズムに従って。

気品ある君の両足は、それらがシャッセする裾飾りの下で、
暗い情欲を揺さぶり、いらだたせ、
  二人の女魔法使いのようだ、彼女らは
深い壺のなかで黒い媚薬をかき回している。

君の両腕は、早熟な怪力男らを手玉に取るだろうが、
つやのある大ヘビの確実なライバルで、
  執拗に締めつけるため、
君の恋人を君の心に刻印するようだ。

広くまるい君の首の上に、太った両肩の上に、
君の頭は、異国の優雅を現し、すましている。
  穏やかで絢爛豪華な様子にして
自分の道を行く君、威厳のある子供だ。


51 猫  Le Chat


         51 猫

           Ⅰ
私の脳内を、自分のアパルトマンの
ように歩き回るのは、美しい猫、
強く、柔らかく、心引かれる。
その鳴き声は、かろうじて聞こえる、

それほどまで響きはやさしく控えめだ。
しかしこの声は静まるにしても、うなるにしても、
いつも豊かで奥行きがある。
それが魅力で秘密なのだ。

この声は、最も暗い私の奥底に
真珠となり、しみ通るが、
調和のとれた詩句のように私を満たし、
媚薬のように私を喜ばせる。

その声は、最も過酷な苦痛の数々を眠らせる、
だからすべてのエクスタシーを含んでいる。
最も長い文を言うためにも、
その声は、単語を必要としない。

いや、私の心、完全な楽器に
くい込み、もっと響く弦を
さらに堂々と
歌わせる弓はない、

君の声よりもだ、不思議な猫、
熾天使の猫、別世界の猫、
君のなかで、すべてが天使におけるように
微妙であり調和している!

          Ⅱ
ブロンドと褐色のそれの毛皮から
出てくるのはとても甘い香り、ある夕暮れ
私はその香気に満たされたのだ、一度、
ただ一度だけそれを愛撫したために。

それは場所の守護霊だ。
裁き、司り、その帝国の
すべての物に霊感を与える。
おそらく妖精だろう、それとも神か?

私の眼が、私の愛する猫の方へ
磁石によるように引きつけられ、
素直に振り向くとき、
そして、私が自分自身を見つめるとき、

驚きをともなって私が見るのは
猫の青白い瞳の火、
明るい舷灯、生き生きしたオパールの
瞳は私を熟視している。


50 曇り空 Ciel brouillé


        50 曇り空

まるで君の眼差しは靄で覆われているようだ。
不思議な君の目は(それは青色、灰色、緑色?)
代わるがわるに優しく、夢見がちで、残酷で、
空の無感覚と青白さを映している。

君は白く、生暖かく、ぼやけたあれらの日々を思い出させる。
それらは魔法にかかった心を泣き崩れさせている、
そのとき、心をねじる何とも知れない悪であおられて、
あまりに覚めた神経は、眠る精神を揶揄している。

君は時々それぞれの美しい地平線に似ている。
それらに霧の四季のそれぞれの太陽が火をつける. . .
なんて君は輝いているのか、ぬれた風景
それを曇り空から射す光が燃え上がらせている!

オー危険な女、オーうっとりする風土!
私は君の雪も氷霧も熱愛するだろうか、
そして私は冷酷な冬から引き出せるだろうか、
氷よりも鉄よりも鋭い快楽を?


49 毒 Le Poison


          49 毒

ワインは一番きたない安宿を
   奇跡的な豪奢に覆うことができる、
そして伝説の柱廊をひとつならず出現させる。
   赤い蒸気の金色のなかに、
ちょうど曇った空のなかに沈む太陽のよう。

阿片は限界のないものを広げ、
   無制限を伸長する、
時間を深くし、逸楽を掘り下げ、
   そして黒く陰気な快楽を
魂にその容量を超えて満たす。

そんなことすべてが及ばないものは毒、
   それが流れてくるのは君の眼、君の緑の眼、
湖、そこでは私の魂が震え私の姿を裏返しに見る . . .
   私の夢々は渇きをいやすために
苦いその渦巻に大挙してやって来る。

そんなことすべてが及ばないものは恐るべき驚異の
   君の唾液、それは腐食する、
それは私の魂を後悔なく忘却のなかに沈める、
   そして、めまいを押し流し、
衰弱したその魂を死の岸辺へ転がす!


48 小瓶 Le Flacon

         48 小瓶

強い香りがある、それにとってはどんな物質も
多孔質だ。それはガラスを貫くとも言えよう。
オリエントから来た小箱を開けることによって、
そのとき錠前がきしみ嫌がって叫ぶのだが、

または無人の家で、あるタンスを開けることによって、
それは刺すような歳月の匂いに満ち埃をかぶって黒い
のだが、時おり見いだすのは心にとめている古い小瓶。
そのなかから生き生きとほとばしるのだ、蘇る魂が。

千の思考が眠っていた。陰気なさなぎたち、
重い暗闇のなかで穏やかに震えて。
それらが、はねをのばし、飛び立っている。
紺碧に薄く色づき、薔薇色の光沢で、金のラメで。

心酔わせる思い出がある。不安げななかに浮かんで
いるが。眼が閉まる。「めまい」が
負けた魂をつかみ両手で押している、
人間の瘴気に覆い隠された深淵へと。

「めまい」が魂を古い深淵の縁に投げ飛ばす。
そこでは、においを発し屍衣を引き裂くラザロが、
目覚めのなかで動いている。幽霊のような死体。
すえたにおいで魅力的で墓を思わせる古い恋のだ。

それで、私が人々の記憶のなかで忘れられたとき、
陰気なタンスの片隅の、老化した、埃まみれの、
きたない、卑しい、ぬるぬるした、ひび割れた、
悲しみの古い小瓶のように私を人が捨てたとき、

私は君の棺桶になろう、愛すべき疫病!
君の力と君の毒性の証人になろう、
いとしい毒、天使たちによって調合されている!
私を蝕んでいるリキュール、オー私の心の生と死!


47 夕べのハーモニー Harmonie du soir

 
      47 夕べのハーモニー

今、時が来て、茎の上で震えながら
それぞれの花が香炉のように香りを発散する。
それらの音と香りは、夕べの空気のなかを回っている。
憂鬱なワルツ、悩ましいめまい!

それぞれの花が香炉のように香りを発散する。
ヴィオロンが苦しむ心のように震えている。
憂鬱なワルツ、悩ましいめまい!
空は大きな聖体仮安置所のように、悲しくて美しい。

ヴィオロンが苦しむ心のように震えている。
優しい心のように。それは広大で暗い虚無を憎む!
空は大きな聖体仮安置所のように、悲しくて美しい。
太陽は自分の固まる血のなかで溺れた。

優しい心、それは広大で暗い虚無を憎む、
輝かしい過去からすべての遺跡を受け取る!
太陽は自分の固まる血のなかで溺れた. . .
君の思い出は聖体顕示台のように、私のなかで輝く!


46 霊的な曙 L'Aube spirituelle


        46 霊的な曙

放蕩者らの店に、白と紅の曙が
心をさいなむ「理想」と一緒にさし込むとき、
復讐する神秘の作用により
まどろむ獣のなかに一人の天使が目を覚ます。

「霊的な天」近寄りがたい紺碧は、
打ちのめされ、なおも夢み苦しむ男のために、
深淵の吸引力をともなって、開き奥深く続いている。
したがって、いとしの「女神」、明快で純粋な「存在」、

愚かな乱痴気騒ぎのくすぶる残骸のうえに
君の思い出は、もっと明るくばら色で愛らしくて、
大きくした私の眼に絶えず浮かんでいる。

太陽はろうそくの炎を黒くした。
したがって、いつも勝ち誇る、君の幻影は、
不滅の太陽に似ている。輝く魂!


45 告白 Confession

         45 告白

一回、ただ一度、愛想のよい優しい女、
   私の腕に磨かれたあなたの腕が
もたれかかった(我が魂の暗い背景のなかで
   あの思い出は少しも色あせない)。

遅い時刻だった、新しいメダルのように
   満月は誇示していた、
そして夜の荘厳は、大河のように、
   眠るパリの上を流れていた。

そして家々に沿って、それぞれの表門の下を、
   猫たちはこっそり立ち寄っていた、
聞き耳を立て、あるいは、親しい亡霊のように、
   ゆっくり私たちに同行するのもいた。

突然だった、ほのかな光の下で花ひらいた、
   自由な親しさのなかで、
輝かしい陽気しか振動しない、
   豊かでよく響く楽器のあなたから、

きらめく朝のファンファーレのように
   明るく楽しいあなたから、
愁いに満ちた音色が、奇妙な音色が
   よろめきながら漏れ出た、

まるでひ弱で、醜く、陰気で、汚い女の子のように。
   彼女の家族が赤面し、
彼女を世間から隠すために、穴倉のなかに
   長く秘密にしていたであろう女の子だが。

哀れな天使、甲高いあなたの音色が歌っていた。
   「何もないわ、この世で確かなものは、
そして相変わらず、どんなに入念にお化粧しても
   表れるのは人間のエゴイズム!

美しい女であることは、つらい務め、
   でも平凡な仕事よ、
機械的に微笑して、うっとりする
   浮かれて冷たい踊り子の!

人の心の上に建物を築くのは、愚かなこと、
   愛と美はすべて裂ける、
『忘却』がそれらを『永遠』に返すために
   背負いかごにそれらを投げ入れるまで!」

私はしばしば思い起こした、あの魔法めいた月を、
   あの沈黙とあの憂愁を、
そして、心の告解室でささやかれた
   あの恐ろしい打ち明け話を。


44 可換性 Réversibilité


         44 可換性

陽気でいっぱいの天使、あなたはご存じか、苦悩を、
恥辱、悔恨、すすり泣き、心配事を、
そして漠然とした恐怖を、それは皺くちゃにした紙の
ように心臓を締めつける、あの恐ろしい夜々のものだが?
陽気でいっぱいの天使、あなたはご存じか、苦悩を?

善意でいっぱいの天使、あなたはご存じか、憎悪を、
暗闇で握られた両の拳、苦汁の涙を、
「復讐」が地獄の集合太鼓を打ち鳴らし、
我々の能力の隊長になるときだが?
善意でいっぱいの天使、あなたはご存じか、憎悪を?

健康でいっぱいの天使、あなたはご存じか、「熱病」を、
それは青白い施療院の高い壁に沿って、
流刑者たちのように、のろのろした足どりで立ち去る。
まれな太陽を求め唇をうごめかして?
健康でいっぱいの天使、あなたはご存じか、「熱病」を?

美でいっぱいの天使、あなたはご存じか、皺々を、
老いることの恐れを、あの忌まわしい苦痛を、それは
渇望する我々の眼が長年味わった眼のなかで
献身のひそかな嫌悪を読むときのものだが?
美でいっぱいの天使、あなたはご存じか、皺々を?

幸福、喜び、光でいっぱいの天使、
瀕死のダヴィデ王は君の魔力ある体の霊気に
健康を求めたかもしれない。
だが君に私がこい願うものは、天使、君の祈りしかない、
幸福、喜び、光でいっぱいの天使!


43a 陽気すぎる人に A celle qui est trop gaie


      43a 陽気すぎる人に

君の頭、君の仕草、君の雰囲気は
美しい風景のように美しい。
その笑いは君の顔に戯れる。
明るい空の爽やかな風のように。

君がすれ違う陰気な通行人は
君の健康に目がくらむ。
それは君の両腕から、両肩から
光のようにほとばしっている。

よく反響する色彩は
君の装いにちりばめられているが
詩人の精神に
花々のバレーのイメージを投げ入れる。

それらの気違いじみたドレスは
色とりどりの君の精神のエンブレムだ。
気違いじみた女、私が恋に狂った人だ。
私は君を憎む、私が君を愛すると同じくらい!

時どき美しい庭のなかで
そこは私が自分の無気力を引きずっていたが、
私は太陽が私の胸を引き裂くのを
皮肉のように感じた。

そして春と草木の緑が
私の心をとても侮辱した、
それで私は一輪の花に対して
「自然」の無礼を罰した。

したがって私は、ある夜、
快楽の時間の鐘が鳴るとき、
君の体にあるそれらの宝物へ、
臆病者のように、音もなく這い進みたいものだ、

うれしい君の肉体を懲らしめるために、
赦された君の乳房を傷つけるために、
それから驚いた脇腹に
大きく開いた傷をつけたいと思う、

そして、目くるめくばかりの甘美!
もっと輝き、もっと美しい
この新しい唇を通して
私の毒液を君に注ぎたいものだ、我が妹!


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